男の子と赤いランドセル

道行く小学生を見ると、最近は本当にランドセルの色がカラフルになったと感じます。定番の黒や赤の他、ブルーやピンクは以前からありましたが、最近はメタリックカラー(ゴールドやシルバー系)やパステルカラーの薄紫やオレンジなどもあります。
大手スーパーのイオンは、「シンプルなデザインと、お気に入りのカラーで6年間をもっと楽しく」というコンセプトで24COLORSという24色ランドセルのシリーズを発売しています。黒だけで、ブラック、メタリックブラック、オーシャンブラック、ファイヤースーパーブラックと4色もあり、赤はルージュレッド、ストロベリーレッドとあります。そのほか、パープル系、パール系など種類豊富で、これらを前にしたら選ぶのに時間がかかりそうです。

ある男の子のエピソード

さて、今日は自由にランドセルの色を選べるようになった今、赤いランドセルを欲しがった男の子のエピソードをご紹介します。

次の春、小学1年生になる男の子を持つAさんは、夏休が終わり、そろそろランドセルを子どもに買ってやろうと近くの大型ショッピングセンターへ家族で行きました。Aさんの奥さんが、幼稚園で他のお母さんから、そろそろランドセルを購入した方がいいと聞いてきたのです。

「オーダーのランドセルはもうとっくに予約が終わっていて、市販のものもこれから人気の色は完売してしまうかもしれないから、そろそろ買ったほうがいいんですって」と奥さん。
夏にAさんの田舎に帰省した際に、Aさんのご両親が入学準備にとお金を包んでくれていたので、それでランドセルは購入するつもりでした。

すんなり選んで終わりと思っていた、ランドセルの買い物でしたが、息子さんが「これがいい!」と選んだのは真っ赤なランドセル。Aさんは慌てました。奥さんが驚いて、他の色を勧めてみましたが、お子さんは絶対赤と聞きません。「赤は女の子の色だよ、おかしいよ」と奥さんが言っても、息子さんは「ううん。幼稚園の運動会だって僕は赤組だったもの。女の子の色じゃないよ」と意志を変えないのです。店員さんに聞くと、女の子で黒を選ぶ子や、パステルカラーの水色を選ぶ子はいても、男の子で赤を買った子どもは今まで対応したことがないと言います。

「こんなに沢山の色を揃えていて言うのもなんですが、6年間使うものですから長く飽きのこない色にした方がよろしいですね」と店員さん。今はパステルカラーを欲しいと思っても、その気持ちが6年続くとは限らない。だからよく考えて選んでくださいねと、そう女の子には助言するそうです。

奥さんは、赤いランドセルなんて持って行って、学校でいじめられたらどうしようとか、よからぬ心配までし始める始末でした。それでも、赤を買うと言う意思を曲げない息子さんに見かねた店員さんが、「今日は下見ということで、一度おうちに帰られて、もう一度よく話し合われてはいかがでしょうか」と提案してくれたことで、今日は買うのは諦めて、一旦家に戻ることにしました。

子供が赤を選んだ理由

家で息子さんと話してみて、息子さんが赤を選ぶ理由がわかってきました。息子さんにとって、赤は特別な色だったのです。
・運動会のかけっこで一等賞を始めてとった今年の運動会が赤組だった。
・日曜日に放送している大好きな特撮ヒーロードラマで大好きなのが赤●●ジャーだった。
・Aさん達の苗字が「赤○」と言い、息子さんが好きな(唯一読める?)漢字だった。
「そんな理由で・・と半分笑ってしまう部分と、いやいやこの位の子どもにとっては立派な理由だと思う気持ちで、自分自身どうしてやったらいいかと困りました」とAさん。「それに、これだけカラフルなランドセルがある中で、女の子が黒を選ぶのはシックでいいとか言うくせに、男の子が赤やピンクは選べないのもおかしいなぁとか夫婦でも毎晩話し合いました」

とりあえずもう少し様子を見て、6年間使うので途中で嫌になっても換えられないこと、赤は女の子の色という固定観念がありお友達からからかわれる可能性があることも良く話した上で、もう一度買いに連れて行こうと夫婦で話し合ったそうです。

お兄ちゃんのランドセル

結局、その心配は取り越し苦労に終わりました。Aさんの奥さんには、近くに住むお兄さんがいました。お兄さん夫婦にはちょうど小学6年生になる息子のB君がいて、B君とAさんの息子さんは年が少し離れていますが従兄弟同士とても仲良しでした。この従兄のB君が、Aさんの息子さんと話していて、どういう経緯でそういう話になったのか、B君が卒業したらそのランドセルをAさんの息子さんに譲ってくれることになり、それを使うことになったのです。Aさんの息子さんにとっては、赤も大好きで特別ですが、従兄のB君は赤よりもずっと大好きなお兄ちゃん。
「こんな経緯がなければ、いくら従兄が綺麗に使ったものだからって、息子にお古のランドセルを使わせようとは思わなかったと思います。でも、いろいろあって、新品とかお古とか、赤とか黒とかこだわるのもなんだかおかしく思えてしまって・・」
新品の赤よりもお古の黒の方がいいと、奥さんもすぐ賛成したそうです。

B君のランドセルはオーダーメイドで作ってもらったコードバン製で、大切に使っていたらしく多少傷はついていますがとても丈夫でまだまだ使えそうです。そして何より、黒に赤い糸のステッチが入っていて、男の子らしいランドセルだけれど息子さんの好きな“赤”が使われていたのです。息子さんは、B君が卒業して譲ってくれる日を今からとても楽しみにしているそうです。
ご両親からいただいた入学準備金は、ランドセルではなくて学習机に使うことにしたそうです。

ランドセルがカラフルになると、その色の数だけいろいろなドラマがありそうですね。